聴きどころ❤こぼれ話


【こぼれ話🥀vol.10】イマジネーション全開ニュース◆大田ジュニアストリングス◆

ドビュッシーが作曲した「弦楽四重奏曲」について、「ほとんどオーケストラのような響きが印象に残る作品ですが、当時これを演奏できた団体はイザイ弦楽四重奏団くらいしかいなかったようです」と聞いており、テクニックやアンサンブル共に相当高度な内容であると理解していましたが、なんと!大田区のジュニアたちが演奏に挑戦していました。(第1楽章と第4楽章)

大田区内の小学生から高校生までが集う「大田ジュニアストリングス」は、子供たちが優れた芸術に親しみ、自らの努力で芸術表現の力を身につけられるように弦楽合奏の場を整え指導する活動を行う団体だそうです。大田区の取り組みをとても頼もしく感じます。地道な努力の積み重ねをご指導されるのは、ヴァイオリン山下美音理さんとチェロ山下いずるさんです👏👏

今月30日【イザイとドビュッシー】🥰大田区民ホール・アプリコでジュニアたちに会いたいですね💛

https://kizuna4.webnode.jp     ← 学生優待チケット情報も掲載中


【こぼれ話 vol.9🥀イザイとドビュッシーと象徴派】

象徴主義symbolismeって?

19世紀後半(1870年頃)ベルギーとフランスで起こり、ヨーロッパ全土、ロシアに波及していった芸術運動のことで、イザイとドビュッシーは只中の音楽家といわれています。鮮やかな色彩感、絵画的映像性をもっていたドビュッシーは印象派と呼ばれるのを断固拒否したそうで、象徴派の影響が濃いといわれています。

象徴派って?

象徴主義者といわれる芸術家全体の呼び名です。人の心には逃れられない苦悩や不安、運命、空想といった精神世界があります。象徴主義は文学(詩)、音楽、絵画がインスピレーションを受け合い目に見えない内面を描き出そうとしたのが特徴でした。イザイやドビュッシーも象徴派の詩人から詩的な影響を受け、神話、文学、絵画から着想を得た数々の作品を残しています。

抽象的で奥深く重い感じに思われがちですが、聴いていると、曲に秘められた熱い思いや詩に表わされるような美しい情景が身にしみわたってきて、素直に心を重ねられるところが、私にとって最も魅力を感じるところです。日本美術の影響も絡む、後のアール・ヌーボーの工芸やデザインに影響を与えた「象徴派の芸術」 今に伝えられる古き良き時代に想いを馳せてみませんか 🥰

象徴派の名言より画家ギュスタヴ・モロー(1826~1898)「見えないもの、感じるものだけを信じる」

詩人ヴェルレーヌ(1844~1896)「何よりもまず音楽を」

イザイ(1858~1931)「情・詩・心なくして何事も成し得ることはない」

ドビュッシー(1862~1918)「言葉で表現できなくなくなったとき「音楽」がはじまる。」「今日の不協和音は明日の協和音である。」

写真提供・竹氏宏和
写真提供・竹氏宏和

落語の寄席ではありませんが、いよいよ大トリを飾る、戸田弥生、池田菊衛、磯村和英、佐藤晴真(敬称略)ドキドキワクワクな顔ぶれ、まさに注目されるところですね。若きドビュッシーが後にも先にもこれしか描かなかった「弦楽四重奏曲」♫ 太田峰夫さん曰く「ほとんどオーケストラのような、色彩的な響きが印象に残る作品ですが、当時これを演奏できた団体はイザイ四重奏団くらいしかなかったようです。」


【聴きどころ by 太田峰夫】ドビュッシー《弦楽四重奏曲ト短調 Op. 10》

「ブリュッセルに短い旅をしてきました。イザイに会うほかに大事な用事はなかったので、最初の訪問先は彼のところでした。言ったとしてもあなたはそれほど驚かないでしょうが、イザイはぼくを見て喜びのあまりほんものの喚声をあげてくれました。ぼくを大きな胸に抱き寄せ、自分の弟みたいに「きみ(tu)」と呼んでくれたのです。」イザイとドビュッシーが知り合ったのは1893年初めのことでした。同年3月31日にイザイがパリでサン=サーンスの《ヴァイオリン協奏曲第3番ロ短調》を演奏した際、ドビュッシーはヴァイオリニストに《シャルル・ボードレールの5つの詩》のサイン付き楽譜をプレゼントしています。二人が急接近したのは同年の11月、ドビュッシーがブリュッセルを訪れたときのことです。上の引用にもある通り、そのときの歓待ぶりについてドビュッシーは共通の友人であるショーソンにあてた手紙のなかで報告しています。《弦楽四重奏曲》は1893年という、二人の音楽家が出会ったまさにそのタイミングにつくられた作品です。音楽語法はグラズノフなど、ドビュッシーが当時関心を寄せていたロシアの作曲家たちを思い起こさせますが、オクターヴの重音奏法がたくさん出てくるところなどは、イザイの演奏スタイルを意識したのかもしれません。楽譜は10月末に完成したのちイザイのもとに届けられ、初演は彼の弦楽四重奏団によって1893年12月29日、パリの国民音楽協会のコンサートで行われました。了

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画像は初演しているイザイ弦楽四重奏団と右端ピアノの椅子にドビュッシーが座っています。

Source: Prof. Lev Ginsburg's "Ysaye" edited by Dr.Herbert R. Axelrod 

右端ピアノの椅子に座っているドビュッシー
右端ピアノの椅子に座っているドビュッシー

【作曲家 森円花さんよりメッセージ💛】

エール弦楽四重奏(文京シビックホール主催)のご依頼で編曲させていただきました唯一の室内楽編曲作品です。今回こうしてまた素晴らしい演奏家の皆様に演奏していただけること大変嬉しく感じております。ピアノ曲として親しまれております本楽曲ですが、本日は弦楽器の魅力によって生まれる新しい可能性と共にお楽しみいただけましたら幸いです。

森円花さんのプロフィール👇  現在、ニューヨークで研鑽を積んでいらっしゃいます♫

20歳で第83回日本音楽コンクール(管弦楽)2位受賞。受賞作品を機に作曲家一柳慧に発掘される。一柳慧コンテンポラリー賞を史上最年少で受賞。代表作として、サントリーホール委嘱作品「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 ヤーヌス」(2020)、上野通明委嘱(東京オペラシティ文化財団企画)「Phoenix 独奏チェロのための」(2022)、「音のアトリウムⅢ 独奏チェロとオーケストラのための」(2018)(2014)など。Asian Cultural Council Fellowにて渡米。桐朋学園にて三瀬和朗氏に師事。



コンサートの後半は2つの弦楽四重奏曲をお楽しみいただきます🥰


【聴きどころ vol.5 by 太田峰夫】♪ ドビュッシー《月の光》(森円花編)

《月の光》はドビュッシーのピアノ曲のなかでももっともよく知られた曲の一つです。1905年に《ベルガマスク組曲》第3曲として出版されましたが、作曲されたのは1890年のことのようです。なだらかな線を描く旋律、二重唱の甘やかな3度の響き、詩人の朗唱を思わせる落ち着いたテンポ、水のきらめきを連想させる中間部の分散和音。どれも月夜のセレナーデ(恋人の部屋の窓辺で奏でられる夜曲)にふさわしい道具立てですが、20代後半のドビュッシーは音量やテンポを繊細にコントロールすることで、彼ならではの雅な世界を作り出しています。

新進気鋭の作曲家である森円花さんの弦楽四重奏曲編曲でお聞きください。了


耳寄りな情報👂【絆スポンサーのプレゼントシート】🥰締め切り5月20日

高校生以下の皆様にプレゼントシート(招待)をお贈りできるようになりました🍀

夜公演となりますので🌙☆彡①保護者(親御様に限らず)同伴が必要となります。1名の保護者様(前売り3000円+学生複数でも受付が可能です。

②コンサート後にご本人より短い感想コメントをお送りいただきます。

ご希望される場合、下記メールにお名前、連絡先、住所、学年あるいは学生証コピーをお送りください。

info@ysayejapan.com   問合せ☎090-7467-4051 日本イザイ協会事務局🎻🎹


お知らせ♫ 音楽現代5月号(4月15日)にインタビュー記事  語り手■太田峰夫、安川智子、永田郁代

 絆シリーズ第4弾、第5弾について語っています。https://ongakugendai.com/2024/04/13/interview-39/


【こぼれ話vol.8 】

イザイのマズルカ♫

「マズルカ」はポーランドの一地方(農民)に伝わる踊りの音楽で、ポーランド人の心髄があるといわれるパワフルな舞曲ですね。「マズルカ」の持つ元気な曲調が、祖国を守り抜いたポーランドの歴史的な意気込みを表すとされ、国歌(ドンブロフスキのマズルカ)として歌われています。「マズルカ」といえばショパン、祖国への想いを込めて50数曲ものマズルカを残しています。ポーランドの一地方の音楽は世界的に知られるようになりました。

ポーランドの偉大なヴァイオリニスト🎻作曲家でイザイの師匠だったヴィエニャフスキーは、ヴァイオリン曲としては珍しい、母国のマズルカやポロネーズなど、ポーランドの民族舞踊のリズムを用いた数々の作品を描いています。

イザイは作曲の手始めに、影響を受けた師匠の国ポーランドの舞曲を描き始めたようです。ベルギー王立図書館音楽部門マリー・コルナーズさんの統計によると、作品番号Op.1はマズルカ・ト短調(1882年イザイ24歳時)、Op.5はポロネーズ・ホ短調(1882年)を作曲、そして、Op.6華麗なるポロネーズ・二長調(1883年)は、ヴィエニャフスキーに献呈しています💛

今回演奏する「2つのマズルカop.10」は25歳の時の作品で、先の太田さんの解説にありましたように、4ヶ月にわたるロシア演奏旅行中に作曲して、その時の伴奏をつとめたシモン・ヴェインベルクSimon Weinberg(ロシア音楽界の重鎮アントン・ルビンシュタインの愛弟子)に、このマズルカを献呈しています💛

この2つのマズルカは、1885年にコペンハーゲンで初演して以来、自作のマズルカを気に入ってあちこちで演奏していたようです。Op10-1には「Dans le lointain」と題がついていて、「彼方へ」等の邦訳をみますが、果たして、過去なのか未来なのか遠いところなのか? 皆様はどうお感じになるでしょうか?

メランコリックなメロディで始まり、パワーみなぎるリズミックな第2主題、そして中間部の甘美な旋律、華麗なヴァイオリンの技巧に息をのむ「イザイのマズルカ」、戸田弥生さんと野原みどりさんの演奏でこの機会にお楽しみください。

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YouTubeより ※広告やノイズなどご容赦ください。

Eugène Ysaÿe:Mazurka Op.10 No.1"Dans le lointain"

 https://www.youtube.com/watch?v=I0nOJzjwSm4

Leonid Kogan, violin Eugène Ysaÿe:Mazurka Op.10 No.2 "Dance Reminiscence"

https://www.youtube.com/watch?v=pSPmScq5lqg

Andrei Korsakov plays Mazurka 

https://www.youtube.com/watch?v=xQoVo5d04cQ

イザイによる演奏 ヴィエニャフスキーのマズルカop.19

https://www.youtube.com/watch?v=8_DNctXpn58&t=50s


画像は2つのマズルカを作曲した1883年、25歳の時に撮影されたウジェーヌ・イザイ(1858~1931)です💛 


プログラム5曲目、前半最後の曲は戸田弥生さん、野原みどりさんの演奏、イザイの2つのマズルカ op.10-1 op.10-2

【イザイ:2つのマズルカOp.10-1 Op. 10-2  by太田峰夫】

イザイの《2つのマズルカ》は1883年1月から5月にかけてのロシア演奏旅行の際に書かれた作品です。4ヶ月にわたる大旅行で伴奏者をつとめたシモン・ヴェインベルクは、ロシア音楽界の重鎮アントン・ルビンシュタインの愛弟子でした。サンクトペテルブルクで協演したルビンシュタインはイザイについて「ヴィエニアフスキを思い起こさせる」と述べ、高く評価していたようです。楽譜は翌1884年にモスクワのユルゲンソン社から出版されましたが、この出版社はチャイコフスキーの数多くの作品の出版元でもありました。こうしたことからもイザイが師匠であるヴュータンやヴィエニアフスキと同様、ロシアの音楽界の人々から歓迎されていた様子がうかがえるでしょう。了*************************:

プログラム4曲目は、野原みどりさんのピアノソロです。ドビュッシーの《喜びの島》👈シテール島********************:

【聴きどころ vol.4 by 太田峰夫】♫

《喜びの島》は18世紀のワトーの名画『シテール島巡礼』から着想を得たとされる作品です。言い伝えによれば、シテール島は愛の神アフロディテを祀った島で、訪れる巡礼者は恋人同士でもあったそうです。調性が不安定な冒頭動機と安定感のある第一主題のコントラストや、恍惚感に満ちた終盤のクライマックスは、恋人たちの困難な旅路を念頭に置いたものでしょう。作曲年は1903年から1904年。この約1年の期間は作曲家にとって、エンマ・バルダックとの出会いと不倫の恋、その発覚、妻リリーの自殺未遂、友人たちとの絶交など、かなりあわただしい動きがあった時期でしたが、同時にそれは孤立の中、新しい伴侶であるエンマとの絆を深めた時間でもありました。題材の選択はこうした伝記的事実ともおそらく無関係ではないでしょう。ドビュッシーが同時期に書いた交響詩《海》と同様、この曲でも海を題材にしている点も面白いところです。了

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海で生まれた愛の女神ウェヌスが最初に流れ着いた島。愛の女神の聖地。人物たちは巡礼者の杖・水筒を持つ。流れるようなリズムで男女が水辺の船へ向かう。聖地へ出発するのか聖地から去るのか?果たしてどちらか? (西洋美術史 矢澤佳子)

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映像付き演奏動画 (ドビュッシーの不倫相手で、2番目の伴侶となったエンマさんの画像も現れますよ~)☛https://www.youtube.com/watch?v=6AOt6IJXOT8


ルーヴル美術館の名品より「シテール島への巡礼(船出)」アントワーヌ・ヴァトー画 




プログラム3曲目野原みどりさんのピアノソロでお聴きいただきます。ドビュッシー《レントより遅く》*********************

聴きどころ vol.3 by 太田峰夫】♫

《レントより遅く》は1910年夏に作曲されたスロー・ワルツです。風変わりなタイトルは、当時流行していた「ワルツ・レント〔遅いワルツ〕」よりもっと遅い曲、というくらいの意味合いです。ドビュッシーはこの曲を好んでいたらしく、わざわざサロンオーケストラのために編曲したり、自分の演奏を自動ピアノに入れたりしています。「繊細に、最大限のルバートをつけて」と指示のある冒頭主題は、長調の旋律と短調の和音とがところどころぶつかり合う、ほろ苦くもユーモラスな味わい。対照的に第一のエピソードは力強く情熱的、第二のエピソードも前のめりの音楽ですが、最後は冒頭主題を回想しながら、消え入るように終わります。了

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付録

サンソン・フランソワ演奏 https://www.youtube.com/watch?v=T-pY2M7LPIY

ハイフェッツ演奏 https://www.youtube.com/watch?v=negtskUQ1GA

ドビュッシー演奏 https://www.youtube.com/watch?v=FEe_gr_fI_o



Topic【ヴァイオリニスト戸田弥生さんから皆様へ💛】

動画メッセージが届きました。編集しました3分の動画をYouTubeで

どうぞご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=cN3cDoGctuY


【こぼれ話vol.7】ポエム・エレジアクop.12 チェロ編曲版とは ❔

原曲のヴァイオリンパートをチェロに置き換えて演奏録音(2010年)した、名チェリスト・アレクサンドル・クニャーゼフ氏と協力し、楽譜として世界初出版(2019年)、クニャーゼフ氏がチェロ版楽譜の編曲にあたって、演奏者の便宜を配慮して運指、運弓を担当してくれました。ピアノパート譜はイザイ自筆譜(ベルギー王立図書館蔵)と照合し、イザイが曲に寄せる想いをそのままに編集しています。ウジェーヌ・イザイがロミオとジュリエットの悲劇から閃きを得て、ヴァイオリン+ピアノ用に作曲しG.フォーレに献呈した作品で、のちにエルネスト・ショーソンのポエムop.25の作曲に大きな影響を与えた重要な作品です。

イザイ作品のなかでは無伴奏ヴァイオリンソナタのつぎに最も演奏されています。

チェロ編曲版日本初演は2019年11月23日、絆シリーズ第1弾でVc.伊東裕 Pf.藤井一興

2度目(5月30日)となる今回はVc.佐藤晴真 Pf.野原みどり

3度目(9月12日)は、Vc.上野通明 pf.北村朋幹です。超難曲ですが、美しく悲しい情景が浮かんできます。

https://kizuna4.webnode.jp  👈絆シリーズ第4弾イザイとドビュッシー


【こぼれ話vol.6】

プログラム第2曲目は、イザイのポエム・エレジアク Poème élégiaque op.12です。今回チラシにはポエム・エレジアクと書きました。ネットでよく「悲劇的な詩」と表記されているのを見かけますよね。フランス語に詳しい方によると、「悲劇的」は、tragiqueの方が合っている……そうなので、日本イザイ協会では「ポエム・エレジアク」とか「悲しみの詩曲」と表記しています。エレジーが連想できないといけないので「悲しみの詩曲」が分かりやすいかな どうでしょうね? 



プログラム第2曲目★イザイ《ポエム・エレジアク op.12》(A.クニャーゼフ編)、Vc.佐藤晴真 Pf.野原みどり

【聴きどころvol.2 by 太田峰夫】♫

(イザイ自身の解説より) 「概して私は詩曲〔ポエム〕という形式に惹かれていました。それは感情表現に向いており、協奏曲の形式が要求するいかなる制約にも縛られていません。詩曲は劇的にも抒情的にもなることができ、本質的にロマンティックで印象主義的です。泣くこともあれば歌うこともあり、影にも光にも、変わりゆくプリズムにもなります。自由なものなので、作曲家の指針になるものとしてはタイトルがあればよく、文学的な構想がなくとも、タイトルがもろもろの感情や抽象的なイメージを描くことを可能にしてくれるでしょう。一言で言えば、詩曲はモデルなしに描かれた絵なのです。」

「詩曲〔ポエム〕」という語をタイトルの一部に持つ作品をウジェーヌ・イザイ(1858-1931)は生前に7曲発表していますが、《ポエム・エレジアク》はそのうちでも最初に完成した「詩曲」です。1892年にヴァイオリンとピアノのヴァージョンが作曲され、それをもとに1902年から1904年にかけてヴァイオリンと管弦楽のヴァージョンがつくられました。本作は作曲家としてのイザイの新境地を示すもので、息の長い旋律線とめくるめく転調は、同時代のフォーレやエルネスト・ショーソンの音楽を彷彿とさせます。ヴァイオリン版の楽譜がフォーレに献呈されているのは偶然ではないでしょう。一方、友人でもあったショーソンが《ポエム・エレジアク》のあと、イザイの依頼で彼自身の代表作《詩曲》を作曲したこともよく知られた話です。

全体はABAの3部形式からなります。中間部の長大な葬送行進曲は、イザイなりの特別なこだわりを感じさせますが、上に引用した本人の説明からすると、悲しみ、ないし「哀歌〔エレジー〕的」な音楽という以上の具体的な「文学的構想」はないのかもしれません。

本作はイザイの代表作のひとつとして、今日でもしばしば演奏されますが、今回はアレクサンドル・クニャーゼフの編曲によるチェロ版をお聞かせします。使用する楽譜は2019年に日本イザイ協会から刊行されたものです。



 

プログラム第1曲目★ドビュッシー:美しい夕暮れ演奏:チェロ佐藤晴真 ピアノ野原みどり

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【聴きどころ vol.1 by 太田峰夫】♫

「川面に映る陽がバラ色に染まり/暖かなそよ風が小麦畑をよぎるとき/幸せであれ、との声があらゆる事物から/悩み多い心へと寄せられる/…」

Lorsque au soleil couchant les rivières sont roses,Et qu'un tiède frisson court sur les champs de blé,Un conseil d'être heureux semble sortir des chosesEt monter vers le coeur troublé

.田園風景を人生の旅路に重ねたポール・ブールジェ(Paul Bourget,1852-1935) のフランスの抒情詩「美しい夕暮れ」にクロード・ドビュッシー(1862-1918)が曲をつけたのは、おそらく1882年のことでした。この頃のドビュッシーは年上のヴァニエ夫人に夢中で、歌の上手な彼女を伴奏するために多くの歌曲を書いていました。この曲もそのうちの一つです。曲は長調で書かれています。臨時記号によって、ところどころ教会旋法風になるのはいかにもドビュッシー風ですが、のびやかな旋律線とハープ風の伴奏音形もあいまって、夕闇の迫る田園風景の、物憂い、ひなびた雰囲気が醸し出されています。


【こぼれ話Vol.5】 ドビュッシーがイザイに宛てた手紙より

ドビュッシーは「弦楽四重奏曲」(1893年)をイザイに献呈しています。その後、管弦楽組曲「夜想曲」(1899年)の元となるヴァイオリンと管弦楽のための「夜想曲」をイザイに献呈すべく描きましたが(1896年)イザイは辞退した経緯があります。断絶もありながら芸術家として最後まで尊敬し続けた2人の友情について、あまり知られていません。ドビュッシーがイザイに何度か宛てた手紙などご一読いただければ幸いです。ドビュッシーのイザイへの思い入れがよくわかります。 

小さい文字なので読みづらくてすみません!よろしくお願いします

Prof.Lev Ginsburg's " Ysaye " edited by Dr.Herbert R.Axelrodp.153~p.161 より 訳:安藤秀則さん(音楽愛好家) 


【イザイとドビュッシー】こぼれ話vol.4

チェリスト佐藤晴真さん♪今回の共演者たちに素敵なメッセージを送っています。

「室内楽の中でも弦楽四重奏で行われる会話が本当に好きで、自分にとっては近いようでどこまで突き詰めても終わりのない程奥深く、それでいて心から楽しめて愛せるものだと感じています。それを今回は素晴らしい先生方とご一緒でき、信じられないほど舞い上がっております。まだまだ経験は少ないですが精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。」

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佐藤晴真 / Haruma Sato(チェロ)

2019年、ミュンヘン国際音楽コンクール チェロ部門において日本人として初めて優勝して一躍国際的に注目を集めた。バイエルン放送響はじめ国内外の主要なオーケストラと共演しており、リサイタル、室内楽でも好評を博している。2020年に名門ドイツ・グラモフォンよりCDデビュー。現在、ベルリン芸術大学在学中。使用楽器は宗次コレクション貸与のE. ロッカ1903年。 2018年ルトスワフスキ国際チェロ・コンクール第1位および特別賞第83回日本音楽コンクール チェロ部門第1位および徳永賞・黒柳賞齋藤秀雄メモリアル基金賞、出光音楽賞、日本製鉄音楽賞受賞、文化庁長官表彰(国際芸術部門)

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彼の演奏曲はドビュッシー:美しき夕暮れ、イザイ:ポエム・エレジアク(チェロ編曲版)ドビュッシー:月の光 (弦楽四重奏版)、そして★弦楽四重奏曲★です。

技巧的に難しいこともあり、イザイの作品はこれまで知られていませんでしたが、新進気鋭の演奏家たちがチャレンジしてくれることになりました。彼ら若い世代によって未知の作品を伝え、イザイの音楽が取り持つ絆の力の大きさを皆様と分かち合っていければとおもっています。御来聴をお待ちしております

コンサート詳細 https://kizuna4.webnode.jp

※御来聴をお待ちしております 💛


【イザイとドビュッシー】


大田区民ホール・アプリコ大ホールで皆様にお楽しみいただくコンサートまで2か月余り、これから音楽学者太田さん(大田区出身)が演奏曲別に聴きどころを綴っていきます。皆様のコメントもOKです。気楽にお付き合いください!


★太田峰夫の聴きどころ★始めに・・

『5月30日の演奏会のメインはドビュッシーの《弦楽四重奏曲》です。東京カルテットで活躍された池田菊衛さんと磯村和英さんがご出演ということで、若い世代とどんなコラボが聞けるのか、注目されるところです。それとイザイの《ポエム・エレジアーク》!A.クニャーゼフによるチェロ編曲を演奏しますが、佐藤晴真さんが難曲をどう料理するのか、わたしも聴いてみたいです。編曲と言えば、気鋭の作曲家である森円花さんの編曲で、ドビュッシーの《月の光》もお聞かせします。ほかにピアノ独奏もあるので、全体としては「盛りだくさん」と言うか、だれもがどこかで楽しめるプログラムだと思います。』太田峰夫



太田 峰夫さんのプロフィール👇

京都市立芸術大学教授。おもな研究領域は20世紀ハンガリー音楽史、とりわけバルトークの音楽。著書に『バルトーク 音楽のプリミティズム』(慶應義塾大学出版会、2017年)、共訳書に『バルトーク音楽論選』(ちくま学芸文庫、2018年)など。近年はヨアヒムやイザイなど、近現代のヴァイオリニストの研究にも取り組んでいる。

コンサート詳細 https://kizuna4.webnode.jp

チケット https://ticket.webnode.jp


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【戸田弥生さんから皆様へ💛 メッセージ💛】

東京カルテットのメンバーでいらっしゃいました、池田先生と磯村先生には、ニューヨークで大変お世話になり、また今回の共演は2度目となります。ピアニストの野原みどりさんとは、ショスタコーヴィッチやバルトークなどの難曲もこれまでに何回もご一緒しました、最も信頼する仲間です。チェリストの佐藤晴真さんは、初めての共演、日本を代表する素晴らしい若手チェリストとして世界でもご活躍、ドビュッシーをご一緒できることを楽しみにしています。音楽は、心から信頼できる音楽家との共演によって作品の素晴らしさ、演奏する充実感を何倍にもしてくれます。またその時間は、私自身の宝です。楽しみにしております。

戸田弥生

コンサート詳細 https://kizuna4.webnode.jp

チケットセンター https://ticket.webnode.jp 



【イザイとドビュッシー】こぼれ話★ Vol.3  2024年3月1日

ドビュッシーは、ベートーヴェンからワーグナーへと続く19世紀ロマン派音楽の絶え間ない進化の殻を破った最初の大作曲家です。形式と展開の論理的な厳しさを持つゲルマン音楽の支配的な影響に反発した彼は、色彩、感覚、儚い気分、ゆったりとした形式の新しい音楽を追求し、フランス独特の、彼独特の音楽を作り上げました。クラシック音楽とポピュラー音楽の両方に与えた影響は計り知れないといわれています。イザイより4歳年下の若きドビュッシー(1862~1918)は、1893年、弦楽四重奏曲ト短調作品10」を作曲、イザイに献呈。同12月19日イザイ弦楽四重奏団によって、パリの国民音楽協会で初演されました。ドビュッシーが従来の形式で作品番号や調号を付けた唯一の作品ですが、ドビュッシーの「弦楽四重奏曲」に対する聴き手の最初の反応は賞賛から困惑、、「転調の乱痴気騒ぎ」「才能が腐っている」など、嘲笑や軽蔑までさまざまだったようです。わずか31歳のドビュッシーが書いた、たった1曲の「弦楽四重奏曲」は、見事な独創性を持ち、今や室内楽のレパートリーとして確固たる地位を築いている傑作となっています。イザイを魅了したのは、ドビュッシーの音楽の衝撃的創造性、鮮やかな色彩感、絵画的映像性でした。

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5月30日の次回コンサートの柱となる「弦楽四重奏曲」、演奏は、戸田弥生・池田菊衛・磯村和英・佐藤晴真♡♡世界的な名手たちのアンサンブルの妙をお楽しみいただきたいとおもいます。♡♡

ドビュッシーの弦楽四重奏曲 第3楽章より♪♪

Andantino, doucement  expressif とてもゆるやかで表情豊かにhttps://www.youtube.com/watch?v=qY_L7XljRlQ 

 夕暮れの移ろい、夜のしじまの月の光、そんな情景が浮かび、心の深淵へ沈み込んでいくような錯覚さえ覚えます。<古池や蛙飛び込む水の音>‥音の余韻を楽しむ日本人の感性とフランス人のそれと共通する何かを想起させたのは、日本(東洋)への憧憬を抱き続けたドビュッシーの音楽かもしれませんね。皆様にとってはいかがでしょうか、、、

♪♪♪チケットのお求めはhttps://ticket.webnode.jp/絆シリーズ第4弾【イザイとドビュッシー】https://kizuna4.webnode.jp


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【イザイとドビュッシー 】こぼれ話Vol.2  2024年2月16日

ピアニスト野原みどりさん演奏曲ドビュッシーのワルツ「レントより遅く」♡

野原みどりさん「かつて大阪のザ・フェニックスホールでのレクチャーコンサートで、1913年★Blütner社製の★★<二重交差弦の楽器(ピアノ)>で演奏した折の、その響きと古い楽器特有の音色がこの作品のノスタルジックな雰囲気と見事にマッチしていたことが、印象深く思い出されます。」

むむ…二重交差弦の響き?ってご存知ですか? ★★「通常弦の上にoctave高い音程の弦を、ハンマーに触らないように張ってあり、それが共鳴して独特な澄んだ輝きのある音色が出る。」だそう… 神秘的な音色のようで鳥肌立ちそうです。

二重交差弦のピアノに刺激を受けた野原さんのソロ「レントより遅く」、そしてドビュッシーの名曲「喜びの島」、特別なピアノ曲をお楽しみください。


補足:★Blütner社ブリュートナー、ドイツ・ライプツィヒにあるピアノメーカーでスタインウェイ・アンド・サンズ、ベーゼンドルファーと並んで世界3大名器として名高い。

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YOUTUBEより♪

J.ハイフェッツJascha Heifetz - Debussy Waltz 'La plus que lente' https://www.youtube.com/watch?v=negtskUQ1GA

サンソン・フランソワSamson François, https://www.youtube.com/watch?v=T-pY2M7LPIY

ドビュッシーDebussy plays Debussy https://www.youtube.com/wa



【イザイとドビュッシー】こぼれ話★ Vol.1 2024年1月14日

ドビュッシーがイザイに献呈した「弦楽四重奏曲」は、次回コンサートの要となる作品ですが、Vl.池田菊衛、Vla.磯村和英両氏が加わってくださる幸運に恵まれました。両氏は40数年の長きに亘り世界の第1線で活躍され、日本の音楽界の誇りとする存在です。

池田菊衛氏から「私はイザイの弟子であったJosef Gingoldに師事し、最近まで、先生が教えていらっしゃった夏のキャンプで同じ仕事をしておりました。時々イザイの思い出話などをうかがい感慨深い思いがあります。」とメッセージをいただきました。

コンサートでギンゴールド先生から伝えられた貴重なイザイの思い出話も交えますので、新しい世代の音楽家たちにも是非きいていただきたいですね。

お若い!時の池田、磯村両氏の動画が豊嶋泰嗣YOUTUBEチャンネルにあげられていました。両氏(東京カルテット日本公演時)が語るストラディバリウスの魅力や演奏を共有させて頂きます。

 https://www.youtube.com/watch?v=FywoINt-8Bs



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